このお話にご協力いただいたモニターの方に、この場をお借りして、深謝いたします。
当院は、連日、修正手術を行っている、非常に珍しいクリニックですが、その程度も様々です。
ちょっとした二重の形状や、幅の違いは、『術前の打ち合わせの行き違い』から生じる場合は、『失敗』と定義できないものもあります。
しかし、前医の『基本的な技術不足による修正手術症例』には、怒りたくなってしまいます。
今回は、そうした『失敗』と定義しても良いと思われる方をご紹介したいと思います。
まず、術前と術後1か月の状態をお見せしたいと思います。
不自然に広い二重が改善して、すっきりとした感じに変わったことがお分かりいただけると思います。
この方の修正手術の方法と、その原因についてご説明したいと思います。
よく、このような方にお会いすると、『前医では、広い幅の二重を希望しました』とおっしゃられます。
一般の方には、『広い二重=目元がはっきり』、というような数式が成り立っているようで、このように希望されるのでしょうね。
しかし、今回の方を見るとお分かりになるかもしれませんが、幅が広い二重が、必ずしも、はっきりとした感じの目に仕上がるとは限りません。
目の表情には、瞼の上がり方が非常に関係しています。
この点を知らずに、手術を行ってしまう医師は、もう一度手術をきちんと勉強しなおす必要があります。
では、実際の修正手術についてご紹介します。
まず、開眼時を見ると分かりますが、余分な皮膚が、かぶってしまい、何とも重たそうな(眠そうな)二重が出来上がってしまっています。
この皮膚は、当然切除しなくてはいけないのですが、この切除方法を間違えると、とんでもない形状になってしまいます。
特に重要なのが、開眼時の状態を予想して、閉眼時の瞼にデザインを書くという『デザイン力』が担当医に要求されるということです。
実際に私が行った閉眼時のデザイン(写真3)と、開眼した時の状態変化(写真4)をお見せしたいと思います。
この余った皮膚のみが問題ではなく、目を開け閉めすることに大きな役割を果たしている『挙筋腱膜』が傷ついてしまっていたことが、もうひとつの大きな原因でした。
一般の方には、少々分かり難いのですが、写真のなかで青く囲んだ部分の組織が均等であることが『正常』です(写真5)。
しかし、黄色く囲んだ部分の挙筋腱膜が無くなってしまい、通常下に隠れて、見えないはずの『ミュラー筋』というものがむき出しになってしまっています。
線を入れていない写真もお見せしますので、比べていただくと、お分かりになるかもしれません(写真6)。
これらに問題があると目を開く力が弱くなってしまいますので、寝ぼけたような目になってしまいます。
修正手術では、これらを一つ一つ丁寧に分けて、元の位置に戻します。
この際に組織に穴をあけてしまわないように、細心の注意を払いながら進めることと、組織の元の位置がどこだったのかを正確に見つけるという能力が要求されます。
こうした工程は、頭でわかっていても、技術的に再現することには、高度な技術と経験値が必要になります。
位置関係も含め、修復が終了した状態をお見せします(写真7)。
何となく、均等になったのがお分かりいただけますでしょうか?
修正手術を行うと非常に腫れます。
術後3日目は、目も開かない位になってしまうのが一般的ですが、これを過ぎれば、次第に腫れは落ち着いてきます。術後5日目、抜糸時の状態をお見せします。
腫れは、だいぶ落ち着いてきていますが、まだまだ二重の形は変な気がすると思います。
このような症状の患者さんが、他院の診察を受けられた後に『他院では、皮膚を切り取って、簡単に、二重の幅が狭く出来ますよ』と言われた、と聞くことが多くあります。
しかし、皮膚のみを切ると改善しないどころか、皮膚を切りすぎて、『目が閉じない』という状況になってしまうこともあります。
二重の修正手術を行う際は、『腱膜や筋肉の位置まで修正しなくては、ならない』と考え、それらを修正するだけの技量を持った担当医選びをする必要があります。
また、『修正手術には、経過に時間がかかる』ということを認識し、担当医を選んだ後は、担当医を信じていただきたいと思います。
最近は、『修正症例は是非当院で』というような医療機関も増えましたが、そのような先生の所で、さらに悪化させられ、初回の修正手術ではなく、複数回の手術を受けられている方にお会いすることも多くなりました。
カウンセリングで、“簡単に綺麗になりますよ!今日やりましょう!”と軽い感じで修正手術を勧められた時には、特に注意が必要です。
修正手術の担当医を決める際は、非常に高度な技術が要求されますので、『担当症例写真を見る』などして、担当医は慎重に選んでいただきたいと重ねて申し上げておきます。
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