美容外科話

COLUMN

目の上・目の下リフト

目の下のしわ、たるみ取りの手術(術後固定と経過)

毎回この話のネタは、患者さんから頂くので、この上もなく感謝しておりますが、今回はご本人からホームページの使用許可を申し出ていただいたので、この場をお借りして深く感謝いたします。

第70話第81話で目の下のたるみを取る手術の皮膚切除を伴う方法をご紹介しましたが、術中に皮膚の切りすぎ(あっかんべーになる)が何故起こるのか、またその予防法はどのようなものがあるのか、術後はどのようにテープを固定しているのかというような、外来で受けた質問に対するお答えを書いてみようかと思います。

今回ご登場いただいた方も年齢的には、まだ40代になりたてとお若いので、切除出来る皮膚はあまり多くないのですが、これがかえって説明には好都合かと思います。

この方は、アトピー性皮膚炎をお持ちだったので、皮膚質のためか、しわも多くなっています(写真1)。

術式自体は第70話を参照していただくとして、脂肪の容量だけが減っても、皮膚が余って状態が改善しない可能性が高いと判断し、この術式を計画しました。


目の下のしわ、たるみ取りの手術中の様子

写真1~2
写真1~2

手術中の写真をお見せしますが、この状態の前に脂肪を切除し、残した脂肪を移動固定してあります。

その後眼輪筋を縫縮して一部を切除することにより引き上げました。この後に皮膚の切除量を決定するのですが、ご覧のように閉眼時は皮膚がかなり余っているように見えます(写真2)。

このまま切除量を決定すると、後で“寸足らず”という状況になってしまいます。多くの失敗がこの状態で皮膚の切除量を決定したために起こっているように思われます。

写真3~4
写真3~4

実際には、開口させて皮膚が下に引っ張られた状態を作りながら、皮膚切除量を決定します。アメリカではこの手術は通常、静脈麻酔下(ご本人の意識がない)で行われるので、助手の先生に皮膚を下方向に引っ張ってもらい術者が切る皮膚の量を決定していました。

私は患者さんの様々な表情に対応できる皮膚の量を決める目的で、色々な方向を見てもらったり、口をあけてもらったりして切除量を決めています。

この後皮膚を切り取って、縫合して手術を終わりにしました。

さて、今回はこの手術の後に、どのように固定するのかお見せしようかと思いますが、術直後は写真のように固定しています(写真3)。

抜糸にいらした時にまだ固定のテープが残っていましたので、この状態をお見せいたします(写真4)。

これは手術をされる先生によってかなり違いますので、一つの参考にしていただければ幸いです。

目の下のしわ、たるみ取りの手術、抜糸直後の状態

写真5
写真5

術後抜糸直後の状態もお見せしますが(写真5)、以前ご紹介した方とは腫れ方も異なっているのがお分かりいただけるかと思います。ご本人曰く、“術後2、3日は目が飛び出る位腫れた”と表現されていましたが、結膜の充血が残っていますので、かなり腫れた事が推測されます。

いつも外来でご説明していますが、先生によって術後固定や術式も異なりますし、また個人差で経過も異なりますので、この点も含めて術前の担当医との打ち合わせを大事にしていただきたいと思います。

目の下たるみ取り【経結膜脱脂】

結膜を切開して脂肪を摘出する目の下のたるみ取り

目の下の弛みを取る手術で、皮膚を切開する方法については以前書きましたが、今回は結膜を切開して脂肪を摘出する手術のご説明をしようかと思います。

この手術は、手技としては登場してから、数十年が経過してしまったので、新しい手術ではないのですが、以前はレーザーの変わりにメスを使っていたために、出血等の問題から一時期廃れてしまいました。

ところが、レーザーが安価で手に入るようになり、またレーザーの特性から出血が格段に減少したために、最近では、メジャーになったという経緯があります。

手術の種類や目的に関しては、以前お書きしましたので、今回は割愛させていただき、手術の具体的な方法をお示ししようかと思います。

この手術の目的はあくまで“脂肪を摘出すること”なので、皮膚や筋肉が弛みの原因の場合は“改善されない”ということになります。

現実的には、皮膚の弛みも筋肉の緩みもあまり無く、脂肪の緩みだけの30代の方が適応となることが多いと思われます。

この手術の宣伝文句は、“傷が見えない”“腫れない”ということなのですが、現実的な手術をお見せしてこれについてコメントしようかと思います。いつもしつこく書いていますが、これはあくまで“私の手術”であり、“私の見解”ですので、この点については誤解されないようにお願いいたします。


手術中の様子

写真1
写真1

まず麻酔ですが、目の下の皮膚と結膜両側から局所麻酔を刺します。目の下を“あっかんべー”の状態にし、レーザーで切開します(写真1)。

写真2
写真2

レーザーで作られた傷は写真に示すように“出血がほとんどありません”(写真2)。

写真3
写真3

この後脂肪隔膜(脂肪が入っている袋)を開き、中の脂肪を取り出します(写真3)。
適量の脂肪を切除したら、開けた穴の一部分を溶ける糸で縫縮します(写真4)。結膜は縫わなくてもきれいにくっつくので、このままにします。

経結膜脱脂手術のメリットとデメリット

このように、
1.手術中の操作は深部に及びますが、皮膚をはがしたりしないので、皮下出血が起こる事が少ない 
2.傷が表面から分からない

というのが、この手術の利点だというのがお分かりいただけると思います。

しかし、
1.この手術は時として視野が悪いので、出血させると止血が難しく、皮膚側から切開を加える可能性がゼロではないということ 
2.出血させると広範囲の“皮下出血(青たん)”が出来てしまうこと 
3.術後結膜の傷から少量の出血を起こし、“血の涙の出る可能性がある”ということ
4.結膜の傷から滲出液(擦り傷の時に出る黄色い汁)が出るために、一時期、目やにが多くなること 
5.手術部分が、一時的に“なんとなく腫れてぷっくりする”
等が問題点で挙げられると思います。

また、この手術は手技的には、あまり難しくないのですが、“脂肪を取りすぎると、老け顔になる”リスクがありますので、私は個人的に緊張する手術です。

摘出脂肪の量に関しては、担当医の経験によるところが多く、曖昧な基準しかありませんので、術後の効果や経過については、術前に担当医から十分な説明を受ける事をお勧めいたします。

目の下のたるみ取り・経結膜脱脂の手術

目の下のたるみには、皮膚や眼輪筋等が弛んでしまった場合と、目の脂肪が緩んで落ちたことによる『膨らみ』があります。

またこれとは別に『目の下のクマ』もよく話題になります。

目の下の手術は、術式に改良が加わり様々な術式がありますが、結膜にレーザーで穴を開けて、脂肪を減らす“経結膜脱脂術”には、大きな変化も見られず、『確立した術式』だと思います。

今回は、この経結膜脱脂について書いてみようかと思います。

モニターの方の術前と術後3か月の状態を比べていただきたいと思います。

BEFORE
術前です
AFTER
術後3か月です

目の下がすっきりとして、目元が明るくなったように見えると思います。

ここで注意していただきたいのが、目の開き方の違いです。目の下の脂肪を取ると、目が開けやすくなるので、目がはっきりとするのです。つまり、『目の上下で相関関係がある』ということです。

これは、美容外科医ならだれでも知っている現象ですが、なかなか興味深いと思います。

実際の手術は、出血も少なく、術後の腫れも少ないのですが、先ほど書いたように上下に相関関係がありますので、術後に上瞼が腫れてしまうこともあります。

この腫れが引くのにも3日程度かかることもありますので、手術を受けられる際は、お休みも取られた方が良いと思います。

また術後の腫れで、眼球を圧迫すると、白目が赤くなったりすることもありますので、『魔法のようにすぐ綺麗』という訳にはいかないかもしれませんね。


取り出した脂肪
取り出した脂肪

手術は、局所麻酔後に、結膜にレーザーで穴を開けて脂肪を取り出すのですが、出血をさせずに取り出すのが最大のポイントです。

取り出した脂肪をお見せします。
この脂肪も、あまり多量に抜くと“老け顔”になってしまいますので、注意が必要です。

術後1か月と術後3か月
術後1か月と術後3か月

この手術の最大の利点は、『傷が表面に付かない』という事だと思います。

ただ、術後の腫れや出血については、術者の技術ややり方によって影響を受ける部分ですので、術前に担当医からきちんと説明を受けることをお勧めします。

また、術後に少しずつ変わりますか?という質問をお受けすることもありますので、術後1か月の状態をお見せします。

あまり術後3か月の状態と変化が無いことがお分かり頂けると思います。

どの手術でも同じですが、すぐに、簡単にというような説明をされる先生には注意が必要だと思います。

手術される際には、熟考されることをお勧めします。

『美容外科話』著者

  • 山本 豊【山本クリニック院長】

    1992年 東京医科大学卒業。2004年8月 山本クリニック設立。
    美容外科の手術を中心に行っているクリニック。 他院手術トラブル修正手術、海外で受けた修正手術にも対応している。日本アンチエイジング外科・美容再生研究会 元指導医。医療法人社団 豊季会 理事長。資格:医学博士(甲種)、日本外科学会認定医、日本アンチエイジング外科学会 名誉理事、JAASアカデミー最高指導医。

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