美容外科話

COLUMN

刺青切除・刺青除去レーザー
第159話

可動域の刺青切除

診察をしていると、指、関節付近、関節にまたがる刺青切除希望の方にお会いすることがあります。特に指の刺青の方は、他院で“切除は出来ないのでレーザーを照射します”と言われ、レーザー治療を受けられている方にお会いする機会が多いと感じます。
今回は指の方と膝の方を例にして、指や関節周囲の刺青切除のご説明をしたいと思います。この話では、お二人のモニターの方をご紹介しますが、写真掲載に快諾していただいた事に、この場をお借りして、深く感謝の意を表します。

まず、お1人目の方ですが、指全周にわたり刺青があり、これにレーザーが照射されています。
見てお分かりいただけると思いますが、図柄が薄くはなったものの、残存しているのがお分かりいただけると思います(写真1, 2)。
BeforeBefore
AfterAfter

このようにレーザー照射で薄くなっても、刺青自体の存在が確認される状態で治療終了となってしまう場合は、治療自体に意味がなくなってしまいます。レーザーを引き続き刺青が完全に消えることを願いながら照射した方が良いのか、切除した方が良いのかは担当している医師としても悩んでしまうこともあります。
ただし、この方に限って言えば、切除しかなかったと言えます。それは、切除した皮膚を観察すると皮下組織にまで刺青のインクが浸透していたからなのです。
お話を治療に戻しますが、指のリング状刺青は全周に切除して縫合する必要があります。平面的な部分の刺青よりも技術的には難しくなります。また、皮膚の伸びが他の部位と比較して圧倒的に悪いので、術前の触診を含めた診察と担当する医師の経験が不可欠なものとなります。
ここで、術後10カ月の状態をお見せします(写真3, 4)が、傷が治り良好な状態を保っています。

After
次にお2人目の方の術前の状態をお見せしますが、左膝関節にかかるように刺青があります(写真5)。術後2週間の時の写真をお見せしますが、膝の動きを制限することなく切除出来たことがお分かりいただけると思います(写真6)。
今回、お二人の方をご紹介しましたが、治療を受けられる医療機関を決める際に“レーザーと切除手術の両方が出来る医師なのか”という点は非常に大事だと思います。術前に“このようにレーザーを照射してだめなら切除しましょう”というような治療方針を立てられる技量の医師に治療を受けられる事をお勧めします。
どの治療法も完全ではありませんが、治療をはじめてから“当院ではこれ以上の治療は難しい”と途中で放棄してしまうのは、担当医として非常に問題があると思います。治療の目的は、“刺青を消す”ことだと思いますので、目的達成まで責任を持ってもらえるのかを含めて術前の説明はきちんと受けるようにしていただきたいと思います。

『美容外科話』著者

  • 山本 豊【山本クリニック院長】

    1992年 東京医科大学卒業。2004年8月 山本クリニック設立。
    美容外科の手術を中心に行っているクリニック。 他院手術トラブル修正手術、海外で受けた修正手術にも対応している。日本アンチエイジング外科・美容再生研究会 元指導医。医療法人社団 豊季会 理事長。資格:医学博士(甲種)、日本外科学会認定医、日本アンチエイジング外科学会 名誉理事、JAASアカデミー最高指導医。